犬の乳腺腫瘍はよく診られる腫瘍の1つです。高齢になると、飼い主さんはもう歳だから、このままでいいやと考え、放置しておくことが多いです。しかし腫瘍は少しずつ大きくなり、大きくなれば周りに血管が増え、それに伴い血行も増加し、犬は気にし始めます。最初の発見から1,2年経過すると腫瘍が大きくなったことにより皮膚が薄くなり、犬自身がなめたり、床などと擦れることで、皮膚が壊死し出血を伴い自潰し始めます。出血があり、化膿してくると悪臭がしてくるので、こうなるとさすがに飼い主さんも病院に連れて来て、手術してくださいと言うことになります。こちらとしては「あの時手術していれば」と時々思うことがあります。
最近では麻酔の安全性、身体に対する負担が少ないので、15,6歳でも血液検査や心臓検査で問題がなければ手術をすることは可能です。今回の症例のように16歳まで放置せずに発見したらすぐに摘出手術を受けることをお勧めいたします。腫瘍が小さければ手術範囲も狭くなり、手術時間も短くて済みます。それが一番動物に負担が少ない方法ですので、飼い主さんが手術を決心をしてあげてください。