犬では時々陰睾(停留睾丸・停留精巣・潜在精巣)が見られます。陰睾とは精巣が本来あるべき陰嚢内にない降りずに腹腔内または鼠径部の皮下にとどっまている状態をいいます。精巣は生後1か月以降に陰嚢内に下降してきます。中には生後数か月後に下降してくる場合もあります。陰睾の場合、精巣が体温と同じくらいになるため精子の形成が障害されてしまいます。(正常では精巣は体温より2℃低いとされています。) 両側の精巣が停留していると繁殖能力を欠くことになります。また正常の精巣と比べると形成不全のため小さいのが普通です。原因は性ホルモンの不足、精巣を導く精巣導帯の発達不良、鼠径管の形成不全などの遺伝的素因と考えられています。
精巣が陰嚢内に降りずに体内に停留し、高温状態にあると、6~7歳齢以上になると精巣腫瘍の発生率が高くなります。一部の腫瘍は悪性で、転移する腫瘍やホルモンの影響で貧血を起こす腫瘍もあります。
1歳齢になっても精巣が陰嚢内に下降していない場合は早めに去勢手術をすることをお勧めします。